NHK「朝の随想」(NHK新潟放送局)

昭和40年から放送されているNHK新潟放送局制作「朝の随想」の原稿をご紹介いたします。平成18年4月〜9月までの期間、毎週月曜日に放送いただいた内容です。

放送第26回 まちづくりを振り返って

「町屋を守れ」と始まった村上での一連のまちづくりは、地域の文化を見直す大きなきっかけとなり、地域の眠っていた宝を発掘しました。恥だとまで言われた町屋が今、市民の誇りに変わり、同時に地域活性化の起爆剤となったのです。村上に大勢の人が訪れ、交流が生まれたことにより、迎える村上市民が初めて我が町の価値に気づき、誇りを持ち始め、更に訪れた人との出会いを楽しみ、喜びを見出すようになりました。一方、訪れた人達は、普通では経験できない村上の町屋文化に触れることで喜び、損得抜きでもてなす村上の市民性に感動してくれました。町に人が訪れ交流するということで、迎える市民、訪れる人が、双方喜びそして喜ばれたのです。町に人が交流することが、文化の発見につながり、心を豊かにしてくれたり、お金に代えることのできない貴重な機会になるということを学びました。

戦後、高度成長期を向かえ日本は豊かになり、地方の市町村は国から多額の援助を受けるようになりました。戦前は地域の人達が町のため私財を投げ打ってまで町づくりを行い、町を支え守ってきた歴史があるのですが、豊かな時代を迎えると、町づくりの機能はいつしか全て行政に移ってしまってしまっていました。次第に町づくりは行政や会議所がやるのが当たり前だという風潮が根づき、「町のためにお金を出すのはもちろん、汗をかくのもいやだ」というようになってしまったのです。行政任せの姿勢、町を思う心の欠如が、気付いたときには町や商店街を駄目にし、地域の大切な伝統文化まで破壊してきたように思えます。「うちのまちでは、会議所も行政も何もしてくれない」ではないのです。会議所や行政に頼らずともやれることは山ほどあるのです。いや本当にいい町を作るには、市民自らが考え意見をだすことは勿論、汗をかき、お金を出してもてやるんだという心意気こそが必要なのです。行政任せではなく、町を誇る市民自らが行動する、それが本当に良い町を作ることになるのです。誰のためでもない、自分達の町は自分達に責任がある、子や孫に誇れる町を残すには、今いる我々こそが頑張らなくてはいけないのです。

「我が町は、我々市民の心意気で良くする」との志をたて行ってきた8年に及ぶ取り組みは、いつしか県そして国からも評価され、応援されるまでになっていました。批判されることも多かった私にとっては嬉しいことです。振り返ってみて、まちづくりに携わることができたことは私にとってとても幸せなことでした。しかし、村上のまちづくりは、これからが正念場なのです。先人達が築き上げた村上の歴史と文化に恥じぬ、個性あふれ、活気があり、誇りある村上の町を作るために、今一度、心に喝を入れ、今後とも一生懸命取り組んで行きたいと思います。

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