NHK「朝の随想」(NHK新潟放送局)

昭和40年から放送されているNHK新潟放送局制作「朝の随想」の原稿をご紹介いたします。平成18年4月〜9月までの期間、毎週月曜日に放送いただいた内容です。

放送第22回 退路を断つ

まちづくりで、ユニークな企画を行おうと意気込んでも、古い組織の場合よくあるのが、あれこれ吟味されたあげく「難しい、やらないほうがいい」となってしまうことです。やりたい人だけで集まってやる場合と違い、保守的な組織の中で合意を得ることは至難の業です。やれない理由に挙げられるのが「お金」「労力」「責任」の3つです。私はこの3つの壁を突破してきたのですが、私流のやり方を例え話でお話します。

まずお金です。「人形さま巡りだって。何十万かかるんだ。俺達出せないぜ」といわれます。その時「ご心配ありません。私が集めてきます。」と応えました。お金の話でストップしたらそれでお仕舞いです。あらかじめ何らかの資金の算段をして臨むことが大切です。次が労力です。「お前60軒も参加店を集めるなんて、誰がそれをやるんだ」と言われます。そんな時「60軒は私が集めます。でも皆さん、この部分だけ手伝ってもらえませんか。」と言うと「いいよ、そのくらいは手伝ってやるさ」と言ってくれます。最後が責任です。「もし事故でも起こったら、一体誰が責任を取るんだ」と言われます。その時「責任は私が取ります」と言い切りました。最低限の安全対策は必要です。でも「もしも」と言いだしたら何もできなくなるのです。そうすると「そこまでいうのならやってみろ」ということになります。人間誰しも自分に面倒なことが降りかかると思うと、つい防御しようとしてしまうのです。私は人の不安な気持を取り除くということをしただけなのです。しかしこれで断る理由がなくなりますから、話が前に進むのです。このように「お金。労力、責任」という面倒なことを自ら引き受けたのが私流のやり方でした。

このやり方は言葉を代えると「覚悟を決める」と言うことです。しかし、やれば良いと分かっていてもなかなか覚悟が決められないものです。実は私も迷いました。町屋再生プロジェクトの立ち上げを考えていた時のことです。「今、町屋の外観を再生したら村上は素晴らしい町になる、やらなければ」と思う強い気持と、「ただでも忙しいのに、やはりできない」と言う弱い気持が交互に襲い掛かりました。そんな時、当時の平山知事と会う機会がありました。私はその時、回ってきたマイクをとり知事に向かって「市民の力による町屋の再生、必ずこれをやり遂げてみせます」と宣言したのです。つまり自分の退路を断ったのです。自分を追い込み、前に進むしかない状況を作ったことが、この後逆に決意を深くし、強いパワーを生んだのです。「まちづくり、みんなで頑張ります」とよく耳にしますが、これは「仲間がやらない場合は自分はやらないかもしれない」と言うことなのです。人はどうでもあなた自身が本気でやるのかどうかが肝心なのです。誰がやろうがやるまいが、最悪一人でもやり通すという覚悟のある人間がいてこそ、開かぬ扉が開き、動かぬものも動き出し、物事が前進すると思うのです。

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