NHK「朝の随想」(NHK新潟放送局)

昭和40年から放送されているNHK新潟放送局制作「朝の随想」の原稿をご紹介いたします。平成18年4月〜9月までの期間、毎週月曜日に放送いただいた内容です。

放送第21回 アイデアのひらめき

村上でまちづくりが成果を上げた理由に、ユニークな企画を数々行ってきたことが挙げられます。しかし企画した私の頭は固く、魅力ある企画を作れるタイプではありませんでした。そんな私がある時、次々とアイデアを出せるようになったのですが、何故でしょうか。実は町を何とかしなければという思いから、全国約300箇所の町を訪れて勉強しました。見るだけでなく、まちづくりの中心人物に会い、必ず話を聞いてきました。そのうち町づくりの知識がどんどん頭に入ってきて、それが一杯になった時に、何かの拍子でアイデアが飛び出してきたのです。ゼロからアイデアを出すのは至難の技ですが、知識を持つことで考える基礎ができ、その何かがヒントになってひらめいたのです。石頭の私ですら、問題意識を持ち、知識を飽和状態まで高めた時、アイデアが生まれ、更に寝ても覚めても夢の中でも考え抜いて魅力ある企画に仕上げることができたのです。

さて、良い企画ができても非常に難しいのが組織の合意を得るということです。仲間内でも意見が一致しないのが現実だからです。「組織の壁」これをどうしたら乗り越えられるのでしょうか。60軒の参加店で始まった「人形さま巡り」ですが、「保守的な町でよく商店街をまとめたね。」と言われます。しかしこの60軒の中には反対する人は一人もいませんでした。実はこの60軒、賛成する人だけを集めた60軒だったからです。反対する人がいないので話は簡単に進みます。「黒塀作り」や「町屋の再生」などの取り組みも、それぞれやりたい人だけ集まってできた組織で、別個の組織になっています。つまり既存の商店街組織など使わず「その目的に対し、やる気のある人だけ集めて実行する」これがスムーズに物事を運べた理由でした。裏話になりますが、私はこの60軒を集めるため、110軒の町屋を回りました。一軒一軒「町を元気にしたいのです。人形さまを出して下さい」と心を込めてお願いしたのです。その時、町の人は私の気持に応えてくれました。FAXやメールではなく、一対一で向い合って直接気持を伝えることが、実は人の気持を動かし理解を得る早道なのだと、この時学んだのです。

しかしまちづくりを続ける中では、苦しくてやる気を失ったこともしばしばでした。それでも続けてこれたのは、全国の頑張る人に会って知識のみならず、大きな感動を受けたからなのです。「村上よりずっと厳しい状況の中で、この人達はここまでのことをやっている。こんなことでくじけていられない」と振るい起されました。まちづくりを始めて8年間、ここまで来れたのは全国の頑張る人達の情熱に触れ、強烈な刺激を受け、くじける度に立ち向かう勇気を与えてもらったからなのです。

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