NHK「朝の随想」(NHK新潟放送局)

昭和40年から放送されているNHK新潟放送局制作「朝の随想」の原稿をご紹介いたします。平成18年4月〜9月までの期間、毎週月曜日に放送いただいた内容です。

放送第20回 まちづくりの裏技

まちづくりを振り返ってみると、物事を成功させるには、どのような企画をするかが非常に重要なことでした。ありきたりの平凡な企画では、いくら頑張っても成果は上がらないからです。私どもは資金がゼロのところからノスタートでした。宣伝にお金をかけずに、人を集めるにはどうしたら良いかと考え、たどり着いたのがマスコミを活かすということでした。マスコミとは遠い存在ではなく、実は何か面白い話題はないかと日々探している存在なのです。マスコミがワクワクするような面白い企画をすれば、必ず取り上げてくれると思ったのです。また、活動資金をつくるため、まちづくりを支援する財団に助成金を申請しました。ただ、200件もの応募の中からたった10件しか選ばれません。この倍率を潜り抜けるには、ありきたりの企画では駄目です。そこで審査委員をゾクゾクさせるようなユニークな企画を考えるようになったのです。

たとえば黒塀プロジェクトの場合、「助成金で黒塀を作り、城下町の風情を高めたい」といって財団に申請しても落とされたと思います。しかし「『黒塀一枚千円運動』を起こして、市民の寄付を募り、集まったお金で板を買う。ブロック塀は壊さずに、ブロックの上から板を張るというやり方で、子供からお年寄りまで集まって釘打ちをし、色を塗り、心のこもった黒塀を作る」という企画ですと革新的な取り組みになるわけです。そして更に「黒塀を作った通りで、5000本の竹の灯篭を並べ、幻想的な灯りの祭りを行います。」というと極めてユニークな企画になり審査委員の評価がグンと上がるわけです。資金のないことが幸いし、考える努力をさせられました。しかし結果として、ユニークな企画が生まれ、審査はトップで通り、マスコミは動いてくれたのです。逆に世間でよくあるのが、自分達がやりやすく、都合のいい、つまり自己満足の企画を立てて失敗するケースです。たとえ面倒で、大変でも、人が驚き、感動する企画を打ち立てることが、逆に成功の近道だと思うのです。

しかし企画を打ち立てる時、実は大勢集まって会議をしてはいけないのです。何故なら10人集まれば10人が、30人集まれば30人皆が納得する企画でなければ納まらなくなります。大勢集まれば集まるほど意見が食い違い、合意には時間がかかるばかりか、面白さは削られ、限りなく平凡でつまらない企画になってしまうからです。保守的といわれ、新しいことをやるのに決して楽な環境ではないこの城下町において、組織のないところから、数々の新しい取り組みを立ち上げ、市民を巻き込み、しかも短期間において、成果をあげることができたのですが、そのポイントは「ごくごく少人数で、人が感動するユニークな企画を打ち立て、大勢集めての協議はせず、その企画に賛同する人だけ集めて実行する。」というものでした。これが、私が実践の中で学んだ「まちづくりの裏技」なのです。

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