NHK「朝の随想」(NHK新潟放送局)

昭和40年から放送されているNHK新潟放送局制作「朝の随想」の原稿をご紹介いたします。平成18年4月〜9月までの期間、毎週月曜日に放送いただいた内容です。

放送第16回 SLと駅の外観再生

村上の町屋の外観を変える「町屋再生プロジェクト」は、全国の人に呼びかけ、集まった基金で現在4棟の町屋が再生されています。昨年の夏のことですが、驚くことが起こりました。民間企業であるJRが、私どもが取り組んできた町屋再生に共鳴してくれ、それまでごく一般的だった村上駅を自主的に昭和初期を感じさせるレトロな外観に再生してくれたのです。このような駅の外観再生にまで至ったのはJRと村上市民とに生まれた信頼関係があってのことでした。この関係ができたのは村上に惚れ込み町のために奔走した駅長、平原悟さん抜きには考えられないことでした。

第一回の人形さま巡りの時のことです、うっかり村上駅との打ち合わせを行わなかったため、駅では人形さま巡りについて周知されていませんでした。そこに全国から観光客がどっとやってきてしまい、村上駅での対応が良くないと不評の声が上がってしまったのです。この翌年、村上駅に駅長として赴任してきたのが平原さんだったのです。この不評は駅長に向けられ、赴任早々風当たりは厳しいものでした。しかしこのことがあったため、駅長は村上駅として何かできることはないだろうかと真剣に考え始めたのです。たどり着いたのが「SL」を村上に走らせることでした。しかし莫大な経費と手間がかかるSLを駅長の権限だけで走らすことはできません。駅長は、新潟支社に何度も足を運び、市民のまちおこしで注目されてきた村上を、企業として応援することの意義と重要性を訴えました。そしてとうとう、普通であればありえないSL運行を実現させたのです。村上では実に27年ぶりの運行となったのですが、「SL村上ひな街道号」と名付けられ、第3回の人形さま巡りの開幕を盛大に飾ってくれました。翌年は駅長の熱意ある働きかけに村上市民が心意気で応え、村上のシンボルである「おしゃぎり」というお祭りの山車を駅前に出して歓迎したのです。地元の中学生までがSLを着物姿で迎えるという素晴らしい展開になりました。平原駅長は移動となり村上をあとにしましたが、SLは現在でも毎年3月の人形さま巡りに2日間運行されています。

このように村上の町おこしにJRが応援し、それに村上市民が心意気で応える、このような関係が生まれてきたときに、町屋再生の動きに連動し、村上駅の改装の話は持ち上がったのです。しかしその丁度一ヵ月後、中越地震が起こり、上越新幹線が脱線してしまいました。「駅の改装の話はこれでおしまいだ」と思っていたところ、このような厳しい状況にありながらも翌年、村上駅の外観再生を断行してくれたのです。このように村上市民による町づくりは、様々な外部の応援団が現れ、助けられながら、それに市民が応え、大きなまちづくりへと発展をしてきたのです。改めて出会いと巡り合せに感謝し、また人の熱意と心意気が生み出す力の大きさに驚いています。

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