NHK「朝の随想」(NHK新潟放送局)

昭和40年から放送されているNHK新潟放送局制作「朝の随想」の原稿をご紹介いたします。平成18年4月〜9月までの期間、毎週月曜日に放送いただいた内容です。

放送第15回 町屋再生プロジェクト

村上の町屋の内部を公開する市民による取り組みは、活動から6年経った頃には、黒塀プロジェクトも加わり全国的にも注目されるようになりました。しかし歴史の町としての町の外観は、近代化の波を受け、サッシやトタンなどで覆われており、せっかくの魅力が隠れてしまっているという現状でした。この頃から「もし町の外観が昔ながらの姿になれば村上は大きく変わる、村上の進むべき次の方向は町の外観に磨きをかけていくことである」と強く感じるようになりました。

外観を再生するというハード事業には多額の資金が必要になります。市役所に働きかけたのですが失敗に終わり、市民の力では到底無理だと思った時、「せっかくここまで町が変わってきたのだ。ここで諦めたらいけない。」と思い直し、一大決心をし、本来行政がやる仕事を市民の力で行うことにしたのです。「1億円あれば」と思ったのですが、これだけの金額を調達するには、国しかない、と考えました。直接大臣に訴えれば、「一億円をモデル事業として出しましょう」と言ってくれる可能性もあるかもしれないと、その可能性にかけ、国土交通省に乗り込みました。大臣には会うことができませんでしたが、近年注目されている景観法をつくった専門官にお会いすることができたのです。結局、一億円の話は実現しませんでしたが、この専門官から人を紹介され、後に村上が驚くような応援団を得ることになったのです。

さて、一億円を一体どうすると悩んでいたときに「吉川さん、年会費というやり方で一千万円集められますか? それができれば10年計画で一億円になりますよ。」と教えてくれたのは雪国植物園園長の大原久冶さんでした。市民パワーで運営している雪国植物園の手法をご教授下さり、励まされ、町屋再生プロジェクトは動き出したのです。

このプロジェクトは市民基金を作り、町屋の外観を再生するお店などに最大80万円の補助金をだすという、全国で初の市民プロジェクトでした。改修は外観だけなので少ない経費ですみ、町並みの趣は大きく変わるのです。平成16年6月、商店街の中心にある和菓子のお店が、アーケードを外して、瓦ぶきの軒を出し、面格子を付け、金文字のレトロな看板まで復元して、見事に再生第一号は完成しました。その後、第2号、第3号と完成し、今年の3月には町の中の情報館として第4号店が完成したのです。市民の力でも町は作れるのだと実感し、無理だと立ち止まるのではなく、勇気を出して行動することで道は開けるのだと実感しました。ありがたいことに、この活動をきっかけに、村上のまちづくりは国からも確実に注目されるようになり、また直接、応援を受けるまでになっていったのです。

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