NHK「朝の随想」(NHK新潟放送局)

昭和40年から放送されているNHK新潟放送局制作「朝の随想」の原稿をご紹介いたします。平成18年4月〜9月までの期間、毎週月曜日に放送いただいた内容です。

放送第11回黒塀プロジェクト

村上には商店街から続く安善小路という通りがあるのですが、ここには重要文化財のお寺や、老舗の料亭、古いお寺の山門などがあり、城下町の風情を色濃く残しています。ただ時代の流れで小路にある塀の多くは一般的なブロック塀になっていました。小路の住民達と集まった時「この小路が昔ながらの黒塀になったらグンと素晴らしくなると思います」と話したところ、「よし、黒塀を作ろう」と一挙に話はまとまりました。

小路の住民で組織を作り、「黒塀プロジェクト」が始まりました。お金のないところから始まった取り組みです、「黒塀一枚千円運動」という運動を起こし、市民に呼びかけ黒塀一枚千円の寄付でお金を集めました。この貴重なお金で板を買い、ブロックの塀を壊さずに、なんとその上に板を張り付け、黒ペンキを塗って仕上げるというやり方です。子供からお年寄りまで市民が集まって釘打ちをし、みんなで汗をかいて作ったのです。塀の内側はブロックのままですが、人の通る外側は見事な黒塀になり、小路の景色はガラッと変わったのです。平成14年から始まったこの黒塀作りは、3年間で150mにまで達しました。奇想天外なこのやり方は市民手作りのまちづくりとして話題を呼びました。噂を聞き県内外から視察が訪れ、「これならわが町でもできる」と各地に波及するようになったのです。

しかし昨年のことです。この小路の道路の石畳化や電線の地中化を目標に掲げた景観協定を作ろうとまで、まとまりかけたその時、大変なことが起こってしまいました。この小路のシンボルともいうべき文化財の料亭が火災で全焼してしまったのです。美しかった小路の景観も壊れて、大変ショッキングな出来事でした。この時、黒塀作りも止めるか、どうするかと物議をかもしたのです。しかし「こんなときだからこそ頑張ってまちづくりをすべきではないか、それがきっと料亭が再開するときの追い風にもなるはずだ」とメンバー全員の気持ちは一致し、逆境の中で黒塀プロジェクトは続行することになりました。

その一ヵ月後驚くことが起こったのです。任意団体でしかない我々の取り組みが国から評価され、偶然この苦しい時期に国が直接支援してくれることになったのです。これにより、火災の後、取り壊されていた黒塀や、今までできなかったブロック塀まで黒塀にすることができ、崩れた景観は美しく復活したのでありました。そしてこの料亭は、ご家族の精一杯の努力により今年の4月、装いも新たに営業再開を果たしたのです。

4年前に一円もないところから始めた黒塀プロジェクトでしたが、現在、黒塀の総延長が270mにも達しました.寄付をしてくれた応援者は600名近くにもなり、小路の一角に全員の名前が誇らしげに掲げられています。市民で描いた夢の世界がまさに形となって実現したのですが、不思議とも言うべきこの結果に、感慨深い気持で一杯です。

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